EDIT
表参道駅から地上に降り立ち、国道246を渋谷方面へ。骨董通りの入口の交差点を越えて程なく、青学の向かい辺りを右に折れて脇道を進むと、車の喧騒は徐々に遠のき、穏やかな雰囲気の建物が立ち現れる。赤いブリックタイルの深みのある建物や、竹藪の後ろに凛と佇む式場を通り過ぎた先、フランス発祥のファッションブランドを1Fに抱えるモダンな建物の最上階に、不思議な魅力を湛える区画を見つけた。
“謎のくぼみ”を天井に有する4F-5Fの最上階メゾネット。目の錯覚を呼び起こすようなレンズ型にへこんだ白い天井は、4M以上の高さがある。設計者の意図が分かりかねるところではあるが、ふもとに立つと開放感を感じられるから不思議だ。上向きに設置されたスポットライトを灯せば、巨大な間接照明としてフロアを柔らかく照らしてくれることだろう。天井の抜け感もさることながら、外部への視線の抜けもこの空間の魅力の一つだ。壁面を型で抜いたような大きな正方形の窓は、表参道の街並みを切り取ると同時に、大量の光を室内に誘い込む。招かれた光たちは無垢のフローリングと白塗りの壁に、鮮やかなコントラストを描いていた。
エントランスのある下階は来客時に使えるラウンジとワークスペースを設置できるほどの十分な広さがある。中でもSOHO利用を想定したキッチンには不自由しないことだろう。仕事仲間を集めて小さなパーティーを開けるほど、充実した設備が整っていた。階段を上った先のくぼんだ天井のふもとには、できればクリエイティブな議論を交わす打ち合わせスペースを配置して頂ければと思う。天井のくぼみが、アニメや漫画のように頭上にアイデアをふくらませる“余白空間”だと思えたからだ。ふとした日常の隙間から新たなビジネスが芽生える現代において、余白とクリエイティブは切り難い関係と言えるかもしれない。アイデアを生み出すスイートスポットとして、この空間から、新たなクリエイティブを発信して頂ければと思う。
EDITOR’S EYE
空調機は各フロアに2機ずつ設置されており、夏や冬の室温調整も差し支えなさそうだ。バルコニーからの景色や2Fのバスルームなど、仕事の疲れを癒してくれるアイテムがあるのもこの空間の魅力だろう。