麻布台オフィス|建築家白井晟一氏設計 ノアビル
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>>LOCATION
ここは、麻布台の飯倉交差点。ご紹介する建物を背にした際、左手には2023年11月にオープンした麻布台ヒルズ。右手には今も尚、東京のシンボルとして君臨する東京タワー。その間となる飯倉交差点の角地には、要塞のように怪しげなこの建物がドンとそびえ立ち、その2つのランドマークに引けを取らないほどに存在感を放っていた。
>>SPACE
初めて足を踏み入れる自分は、少しの恐怖心とワクワク感を持ちつつ、アーチ状のアプローチを潜る。そして振り返ってみると、外の景色が、左右の壁に反射して異世界のような景色となっていて、そのテーマパーク感にテンションはかなり上がった。
しかし、室内は、そんな演出を考えると拍子抜けしてしまうようなスタンダードなオフィス仕様。空間の形状は、外観の円筒形そのままで、更に窓も少なめとだいぶ閉鎖的な印象だ。だけど、逆に丸みのある空間、窓が少なめということから、どこか守られている感のような、妙な安心感も感じられる。そんな、ある意味保守的すぎと思える空間だが、嬉しい偶然も。同じフロアに、ゆったりとした共用ルーフテラスが備わっている。もしオフィスで煮詰まってしまったとしても、気軽にラップトップを持って外の風に当たりながら作業なんてこともできそうだ。
4つのスリッド状の窓からは、抜け感のある景色を見渡せることもでき、外観のおどろおどろしさとは裏腹にゆったりと快適な時間を過ごすことができそうな空間だった。
>>HOW TO USE
この建物に初めて足を踏み入れる際に抱いた高揚感は、個人的には子供のころ遊んだあの横スクロールゲームのボスステージ(WORLD8-4)に挑むような感覚だった。残念ながら、この感覚は最初だけで次第に慣れてしまうかもしれないが、初めて来る取引先などは、同様にそんな感覚を体験することになるだろう。そして、その体験自体が来訪者への“おもてなし”にもなると思えば、演出としてはなかなか悪くない。この、とてつもなくインパクト大の建物を設計した建築家白井氏は、どういった意図を持ってこの建物を設計したかは分からないが、現代ではこのような世界観を持ったオフィスビルというのはなかなか見ることはない。そう考えたら、この希少な建物をあえて選ぶ企業は、遊び心や冒険心もきっと強いはず。室内は、その外見に比べれば大人しくまとまってしまっているが、持ち前の遊び心を働かせて、自分たちも楽しみ、訪れる方を改めて“おもてなし”できるような空間づくりを狙ってみてはいかがだろうか?
EDITOR’S EYE
上京したての頃、東京タワーに観光しに向かう道中でこの建物に出会った。東京タワーから見る景色なんかよりも、このインパクトある外観の建物の方が印象に残って家に帰った記憶がある。一度見たら忘れられない建物。それって純粋にすごい。