神保町オフィス・店舗 | 天井高最大4.45Mの地下スケルトン空間
EDIT
>>LOCATION
世界最大級の古書店の街と言われる神田神保町エリア。古書の他にも、ビジネス街、学生街、飲食店街、スポーツ用品店やカレーの聖地などなど。いくつもの顔が混在するこの神保町は、他のエリアにはない独特のカルチャーを備えていて、ただ街を歩いているだけで、とてもワクワクさせてくれるエリアだ。そんな様々な目的を持った人々で賑わう神保町駅周辺。そこから4分ほどの、靖国通りから少し奥へ入った場所に、この建物は立っていた。
>>SPACE
1F路面には「MONTURA TOKYO」というアウトドアショップの入るこの建物。今回ご紹介するのは、そのショップの脇から建物へ入り、象徴的な円形の吹き抜けを下りていった先にある地下空間。かつてはサブカルの殿堂、ビレッジバンガードとして長らく使われていたこともあって、懐かしく感じる方もいるのではないか。
室内はスケルトン。エアコンや照明は残されているものの、それ以外の装飾を全て削ぎ落とした、躯体現しのまま。すっぴんとも言える状態だが、その姿がかなりカッコいい。外の吹き抜けを囲う円形コアの存在感や、グリットに立ち並ぶ柱。天井高はスラブ下で3.7M〜4.45Mと優秀で、築20年とは思えないコンクリートの表情がとても若々しく、デザインも全然衰えを知らない。地下、スケルトン。そんなワードから連想されるような空間のイメージはすぐ捨てて欲しい。この空間は性格が明るく、開放的で伸び伸びしていて、中央の吹き抜けからは、雨や風など、自然の移ろいも身近に感じられる。素の表情でもこんなにも魅力的で、デザイン性があって、可能性を感じる空間。これはなかなかの逸材だと感じた。
>>HOW TO USE
この空間では、なにをしようとも“様(さま)”になると思う。天井高を活かした撮影スタジオやフィットネス系。それこそビレッジのような、サブカル的店舗もいいし、なにかのラボ的なオフィスとして使うのもすごくイメージがつく。いずれにせよ、空間にそれほど手を加える必要はないだろう。水回りを部屋の隅っこに作るぐらいで、他には装飾はつけず、もうこのままで。床の段差も、見方によってはうまくエリア分けもされて使いやすく、高くなっているところはベンチとしても。壁にはアートやポスターなどをさり気なく飾り、インダストリアルな家具や照明で彩れば、無骨でカジュアルな空間の完成だ。もちろんテイストはお任せするので、柔らかくしたり、カラフルにしたりは自由だが、そんな要望にもうまく答えてくれるカメレオンのような柔軟性も秘めていると思う。
さまざまな顔を持つ神保町。そんな場所にある個性的な建物と、すっぴんが美しい地下空間。そんなポジティブワードを秘めたこの空間で、知的に働くか。クリエイティブに働くか。またはアクティブに働くか。どのような働き方にせよ、この神保町らしく働くことができ、何をしようと元々の素材が良いからこそ、この空間もうまくその温度感に身を合わせ、メイクチェンジしてくれるのではないだろうか。
EDITOR’S EYE
言い忘れたが、設計はこの手のデザインビルを多く設計している、谷内田章夫氏率いるワークショップ。そのためか、歳を重ねても古さを感じさせない普遍性のあるデザインで、いつまでも魅了してくれる建物だ。区画入り口前のホールになった部分は、基本的には共有部だが、場合によっては看板や、スタジオなどでは撮影なんていうのもできそうだ。