南青山オフィス | 有名建築設計事務所跡地
EDIT
>>LOCATION
南青山の骨董通りを、六本木方向へとまっすぐ進むこと10分ほど。六本木通りと合流する少し手前に、コの字になっている路地がある。あまり目立たないニッチな通りだが、以前までアーツ&サイエンス青山店があった道と言えばイメージしやすい方も多いかもしれない。ここ最近もいくつか感度の高いショップがしれっと誕生し、プチ盛り上がりをみせている路地だが、そんな道の入り口付近にこの個性的な建物は現れた。
>>SPACE
まるで岩のような、独特の肌をもつこの建物。実はこれ、元々のモザイクタイルを全て剥ぎ取り、その跡をそのまま残して上からシルバー塗装で仕上げたもの。そんなワイルドな手法によって、他ではなかなか見ることのないこの珍しい表情を作り出していた。
募集はこの建物の2F。室内は100㎡ほどのすっきりした間取りで、壁・天井はスケルトン仕様、床は黒いタイル張りのざっくりした感じの空間。以前までは有名な設計事務所が使用していた区画で、10年あまり使っていたというからかなりお気に入りだったのだろう。現在は退去したままの状態なので、かなりくたくたな状況。それに加え、薄暗い室内に、外の緑や向かいの建物の反射した光が室内に妙な色を落として、怪しさ増し増し。さらに、反対側の窓は一面蔦に侵略されていて、所々室内へも侵入を許してしまっており、もう全体的にはカオス感すら漂う。ただこれはディスっているわけではなく、それがまたこの空間の魅力で、よく言えば自然に身を任せているような、怪しさの先に不思議な面白みを見出したような空間だ。
>>HOW TO USE
ハッキリ言って、室内はだいぶボロい。ある程度手直しは行う予定ではあるが、それでもエアコンやトイレなどの設備面はこのままが原則なので、だいぶ手は掛かるだろう。しかし、この建物の壁のように、面白そうな話にはすぐのっかるオーナーとの情報は入っているので、逆にいじる自由度は高く、面白い空間が作れるのは大きな特典だ。
元々いた建築家の記事を漁ると、「自然環境に『からまる』べきだ」と唱えている。この物件はどことなくそれを表しているようで、建物の外壁も滑らかなタイルより、この岩のようなゴツゴツした表情の方が自然にうまく絡まりやすそうだし、窓際のワイルドな蔦も、このまま侵略を待っているのはこのためなのかもしれない。そんなコンセプトに乗っかって、例えばこの空間も、この色気ない床のタイルを剥がしたままの粗い表情をそのまま仕上げとする事で、もう少し外の光の色や、蔦の感じをうまく受け止められることができるんじゃないか。今の怪しい雰囲気はその絡み方にエラーが起こっているだけで、意外と簡単に解決でき、いい怪しさ備えた魅力的な空間へとうまく引き立てることはできるだろう。ただ空間単体を彩るだけでは面白くない。せっかくなら元からあるこの窓先の緑や環境とうまく絡められたら、より深みのある素敵な空間になり、そんな空間で働くのは純粋に楽しそうだ。
EDITOR’S EYE
1Fはインテリアショップ、B1Fは会員制バーで、3Fはオフィスなど、複合的に使われているこの建物。その見た目から只者じゃない雰囲気があり、個性的で面白みのある物件だ。
ちなみに気になっていると思うが、前入居者は平田晃久設計事務所。来年、明治神宮前の交差点に完成予定の商業施設の設計者として知られる会社で、もちろんながらのいい旅立ちの移転なので、この建物はそういった運気も備えているのかもしれない。