西麻布オフィス | 庭付き1棟ビル
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西麻布交差点より広尾方面へ数分ほど。外苑西通りから2ブロックほど奥に入ると、なんとも面白い光景に出会える。通りからはその全貌を望むことができないほどに、大きな木にすっぽりと覆い隠されている建物。もしかしたら人前には出たがらないシャイな性格で、正面の木にこっそり隠れているぐらいがちょうどいいと思っているのかもしれない。そう思い始めると、よりこの建物に愛おしさを感じた。
緑の門をくぐると、ようやく建物はその全貌を現す。その佇まいが、妙に西麻布という土地に馴染んでいる洋風の建物。まるで海外の格式高いホテルのようでもあり、回転扉の先に立つコンシェルジュの姿や、木を囲うオープンデッキでアフタヌーンティーを楽しむマダム達の姿が容易に想像出来る。とは言え、実際にはこれまで何世代かに渡ってレストランとして使われてきたと言う。中二階を含む4フロアで構成される内部は、本来の空間を残しつつも、部分的に前テナントの内装を撤去したままの荒々しい個所が残されていた。また、最上階にはルーフトップもあり、周囲に高い建物が無いため、大きく切り取られた空がなんとも気持ち良い場所。一部キッチンが設置されていた形跡がある事を考えると、これまでもルーフトップガーデンとして使われていたのだろう。ナイトタイムには先に煌めく六本木のビル群を眺めながら、ムードある大人の時間を楽しんでいた人々の光景が目に浮かぶ。
5年契約の再契約不可という募集条件なので、内装を整えるためにどこまで初期投資をするかは悩ましいところだ。もちろん理想の空間まで徹底的に作り込むのもいいが、あえて全体的にキレイに整えすぎずに、最低限の仕上げでワイルドな表情を残してみるのも一つの手かもしれない。大きな木にすっぽり姿を隠す、ちょっとシャイな建物。でもその本来の素顔は、見た目は洋風の端整な顔立ちをしており、内にも秘めたるポテンシャルを十分感じさせてくれる。なかなか手を焼かしてくれそうな物件ではあるが、同時に感じるこの建物の期待感に身を任せ、5年という限られた期間の中で、愛情をもって存分に手を掛けてやりたい存在だ。
EDITOR’S EYE
好みの分かれやすいテイストだが、好きな人にはたまらない建物だろう。アクセス面では周囲の渋谷や六本木などよりは利便性が薄いが、物件の特異性などを考えればエリア度外視でも見てみたい物件だ。