渋谷オフィス | 道玄坂沿いレトロなスケルトン空間
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LOCATION
今もなお、大規模な再開発が続く渋谷駅周辺。工事中の騒がしさに加え、近年ではインバウンドの旅行客が多く訪れ、スクランブル交差点などは若干カオスなほどの賑わいをみせている。この建物へは、あえてそんな喧騒の渦を避け、さらりとマークシティーを抜けて道玄坂の中腹へとワープ。さらに道玄坂の頂を目指してしばらく進むこと1〜2分ほど。街の賑わいも遠のき、落ち着きを取り戻したような場所に、このレトロさを滲ませるビルが静かに立っていた。
SPACE
建物は築50年を越える、いわゆる“渋ビル”。これを古臭いとみるか、それとも良いレトロさと好意的に見るか、なかなか意見は分かれそうだが、個人的には後者。いい意味で今っぽくないレトロな表情を纏うこの建物の内部に、これまた渋カッコいい空間を見つけた。
室内は六角形の個性的な窓が連続するスケルトン仕様の空間。無骨な床・天井の表情と、窓のレトロなデザインがうまく噛み合い、窓先にチラつく街路樹の緑によって、うまく自然の気配もこの無機質な空間に取り込んでいる。天気が良ければ、この窓面から射し込む光もまたよく映えるだろうし、これだけ窓があれば風も気持ちよく抜けていきそうだ。この渋カッコいい空間が意図的に作られたわけではなく、ただ以前の装飾を剥ぎ取っただけ、という偶然の産物だからまた面白い。それだけ素地が良かったということだろう。意図せず奇跡的に生まれたこの空間は、装飾はなくても、むしろ魅力がビンビンに際立っていた。
HOW TO USE
何も整っていないようで、実はすでに“色気”は整っている。だからこそ、ここへ最低限を意識して何を足して、更に高めてくか。その仕上げの匙加減を楽しむことが、この空間との正しい付き合い方なのかもしれない。もちろん、照明を設置したり、壁の補修などはこの空間を使う上で必須となるが、裏を言えばそれだけでももOK。この雰囲気のまま、デスクを並べ、窓際にちょっとしたソファスペースを設ける程度でもカッコ良くないか。置く家具も、インダストリアルなものから北欧っぽいものまで、どのスタイルでもフィットしそうだし、あえて様々な要素を混ぜて、ギャップを楽しむのもまた悪くないと思う。
ここで大事なのは、整えすぎないこと。多少のラフさや、アンバランスさ、そんな抜け感が、この場所をより魅力的にしてくれる。過剰に飾らなくても、自然体のまま。哀愁と渋さとちょっとした怪しさ。この空間の持つキャラクターを味方にすれば、無理に飾らなくても、自然とカッコよさはにじみ出てくるはずだ。
EDITOR’S EYE
以前まで30年ほど習字教室が使っていて、その古くなった内装をただ剥ぎ取っただけ、というのが今の姿。それなのにこんなに雰囲気があって、渋くて、カッコいいのはズルい。かなりキャラクター性もあり、面白いオフィス空間を手に入れられるのではないだろうか。ちなみにエアコンは残置物、男女別トイレは今回の募集にあたって新規で設置されたものでピカピカなのは地味に嬉しいポイントだ。