目黒オフィス・SOHO | リノベーション済みコンパクト空間

LOCATION
目黒駅の喧騒を尻目に、ホリプロがあることで有数な行人坂を下る。目黒川まで辿り着くとホテル雅叙園東京の存在感に圧倒されるが、そのまま不動前方面に川沿いを歩けば、散歩を楽しむ人たちの雰囲気に引っ張られていつの間にかのんびりとした空気が流れ出す。もう少しでまた桜が楽しめるな、なんて考えながら少し脇道に逸れて行くと、住宅街の中にその建物は姿を現した。

SPACE
今回ご紹介する1Fは、オートロックを通らずに外部から直接アプローチが可能な特別感のある区画。建物のベースは住居仕様なのだが、1Fはそこへ事務所要素を足すリノベーションを行った。各部屋で全体的な統一感はありつつも建具の色や造作棚などのちょっとした違いで雰囲気が異なる面白い空間なのだが、この空間の本質はそこではない。
そもそも、素材からして良かったのだ。
実は半地下と言った方が正しく、正直に言えば天井も低め。しかしながら、室内に入るとすぐに大きな横長の窓が出迎えてくれ、その視線の先には緑がのぞいている。さらにガラスブロックからの柔らかい光は部屋全体を包みこんでくれる。
目を楽しませ、光を取り込み、人の視線は遮る。設計者の優しさに溢れた緻密な計算を感じる空間だった。

WORKSTYLE
元々が住居ということで、トイレだけでなくちゃんとしたキッチンとシャワーまで付いている。定番の考え方をすれば、完全な事務所ではなくSOHOとして1人で利用するのも当然良いと思う。親しい経営者仲間を誘って、隣同士で借りるなんてのも想像するとワクワクする。だが、あえて個人的な希望を言えば、今まさに横並びで2区画が募集中という貴重なタイミングのため、同時に借りて用途を分けて行ったり来たりしてみて欲しいところだ。
また、この空間にいると不思議な安心感を感じた。最初は住居っぽさから来るものだと思っていたが、途中で半地下という低い目線にいることがその原因であることに気が付いた。地面が見える目線、地に足がついている、といった理由もあるが、ふと思い出したのが、大人達の中で1人ポツンと低い視線から見上げていた子供の頃のこと。自分のことは気にせず、良い意味で無視して放っておいてくれる、けれど決して孤独ではない安心感。そんな包み込まれるような優しさがこの空間には備わっていた。

近くの目黒不動尊（瀧泉寺）は、もともとは海運守護の神で漁民に信仰され、転じて商売繁盛の神として広く信仰されるようになったお寺だ。身体健全・病気平癒などのご利益もあり、設計者だけでなく地域にも優しく見守られている、そんな気にさせてくれる建物だった。