神谷町オフィス|東京タワーを望むレトロな居抜き空間
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LOCATION
日比谷線「神谷町」駅から徒歩4分。飯倉交差点のすぐ近く、麻布台ヒルズの開業によって、街の景色が一気に更新されたエリアだ。以前よりも空が広く感じられ、道行く人の数も明らかに増えた。ずっとこの街を知っている人ほど、その変化を実感しているはず。
そんな流れの中で見つけたのが、タイル張りの外観が印象的な築60年超のレトロビル。再開発の勢いとは少し距離を取りながら、変わらずここに立ち続けてきた建物だ。派手さはないが、なぜか目に留まる。その理由は、入り込むと分かってくる。
SPACE
正直、この空間はかなり良い。入った瞬間に、「あ、これは好きな人多いだろうな」と思わせるタイプの内装だ。きれいに整えすぎていない床、躯体をそのまま見せた天井。そのラフさが、変に気取っていなくて、素直に格好いい。
室内は、社長室と会議室として使われていた2つの個室に、執務スペースとフリースペースが緩やかにつながる構成。木製収納は撤去予定だが、それ以外は現状のままでの引き渡しが可能だ。天井高は約2.8mと特別に高いわけではないが、窓がL字に連なり、視線が外へと抜けていく。都心にいながら閉塞感を感じにくいのは、この開口の取り方のおかげだろう。窓の多さと光の入り方も効いていて、時間帯によって空間の表情が自然と変わる。窓先に東京タワーがちらりと見えるのも、この立地ならではのポイントだ。レトロな外観と、この肩の力が抜けた内装。その組み合わせが、この物件の空気感を決定づけていた。
HOW TO USE
半世紀以上この建物を見守り続けているオーナー。次の入居者を迎える上で、「まずはこのままの空間を気に入ってくれる人に見てほしい」と考えた。管理のしやすさを取ればスタンダードな仕様に戻すという選択肢もあったはずだが、優先したのはそこではなく、あくまでも未来の入居者の想い。とはいえ、居抜きを前提にする必要はなく、要望があれば柔軟に相談できる余地も残されている。
この建物には、「こう使ってほしい」という強い主張はない。その一方で、「雑には使ってほしくない」という愛情も自然と伝わってくる。だからこそ、派手な内装を足すよりも、今ある要素をどう扱うか。その向き合い方自体が、この場所での使い方になりそうだ。
クリエイティブ系の企業が多く入居してきたのも、きっとその感覚が共有されてきたからだろう。完成されたオフィスを借りるのではなく、空間と感性をつくりながら使っていく。増床や移転を建物内で選ぶ入居者が多いのも、このスタンスが心地良いからかもしれない。オーナーの愛ある一言をどう受け取るか。ここでの働き方は、そこから始まる。
EDITOR’S EYE
個人的に一番印象に残ったのは、建物の管理のされ方。オーナー自身が隣のビルに入居し、平日は毎日共用部の清掃を行っているという。築年数からは想像しにくいほど建物全体に清潔感があるのは、その積み重ねの結果だろう。「ちゃんと目が届いている建物」という安心感が、ここにはある。