市ヶ谷オフィス | 2024年8月リニューアル、セットアップ空間
EDIT
>>LOCATION
場所は市ヶ谷。外濠沿いに伸びる外堀通りや駅周辺はビルが立ち並ぶビジネス街という街並みだが、路地を入れば少しディープな飲食店やショップも点在し、さらに奥には住宅街も広がるなど、さまざまな顔がこのエリアの面白み。また、大手印刷会社や美大などもあるなど、クリエイティブ系の若い世代も多いのが好印象でもある。そんな市ヶ谷駅から5分ほど。小高い坂道を上った場所にある防衛省の敷地沿いに、なかなか面白い物件が現れた。
>>SPACE
2024年8月に1棟フルリニューアルされたこの建物。元々は市の宿舎として使われていたものを、大手デザイン会社出身の新鋭メンバーによって、ガラッと姿を変えた。室内は造作や家具などが備えられたセットアップ仕様。1F・2F・3F-4Fの3フロアで、いずれも間取りやデザインのテイストは少しずつ異なるものの、新しい素材と古い素地との対比をうまく表現し、更に各フロアが持つ空間の特徴に落とし込んでいる。特に1F路面フロアや、3F-4Fのメゾネット空間のテラス席のようなガラス天井、屋根裏のような形の4Fなど、元々特殊な空間に上手くデザインが加えられ、他では見られないような良いキャラの空間となっている。
日中は光もよく入って穏やかだし、目の前の道路も車通りなどは少ないので、常に落ち着いていたりと周辺環境も良好。瞬時に働くイメージが持ちやすく、デザイン性、環境、機能性など、なにかといいものを備え持った空間だった。
>>WORKSTYLE
この物件の良さは、攻守のバランスが絶妙に上手いところだろう。市ヶ谷という、ある意味保守的なエリアの温度感をしっかり守りながら、空間は、イマドキをちゃっかりと組込み、しっかり攻めていると感じさせられる。例えば、所々露わになっているコンクリート素地の床や柱などが、カジュアルな若い表情を見せつつも、落ち着きある色合いや、あえてスタンダードな天井仕上げなどで、うまく大人な雰囲気に纏めている。そういった演出により、コンクリートに残る糊の跡などが、この空間では妙に上品にすら感じられてしまうからまた面白い。
まだまだ、賃貸マーケットにおけるオフィス空間は、一部のエリアを除いて、守り一辺倒のスタンスが多い現状。このエリアもどちらかといえば、そういうエリアに属していると思っているが、この空間の守りと攻めのバランスの取り方はとても良く、特に攻め方が上手い。この空間は、ここで働く人たちのパフォーマンスを上げるだけではなく、このエリアのオフィスの可能性を高めてくれる1手につながる気がした。
EDITOR’S EYE
このエリアとの対比の使い方が上手いこの物件。最近ありふれたセットアップ物件の中で、久々にエリアとの相性を含め、納得させられる空間だった。ちなみに上層階の窓先には、防衛省の敷地が見え、そこには日本の上空を守っているであろう兵器などもチラチラと。ミリタリー好きには違う意味でたまらないポジションだろう。