白金オフィス・店舗 | 白金北里通り 元ショップ居抜き1棟
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LOCATION
場所は白金北里通り沿い。最寄りの広尾駅から徒歩10分ほどと、決して駅近とは言えない場所だが、その分この通りには古民家をリノベした趣あるカフェや、個性的なショップなど、目的性と感度の高い店が点在している印象。それを目的に訪れる人が多いなど、コアなファンに厚く支持されるような通りだろう。そんな通り沿いの中でも人気のカフェの一つ、「anea cafe」。この建物があるのはその隣、訪れる人も自然と足を止めるようなうまいポジションに立っていた。
SPACE
黒い外観がひときわ存在感を放つこの建物。元はランドセルで知られる「土屋鞄」の自社店舗として建てられ、これまで使われてきた。そんな背景もあり、シンプルな家形の外観とは裏腹に、その内部にはなんとも多彩なスペースが広がっている。
中央の階段を軸に、左右にスキップフロアのように展開する室内空間。開放感あふれる吹き抜けの1F、落ち着いた和室を備えた2F、屋根裏部屋のようなプライベート性を感じる3Fなど、その内部はバリエーション豊か。さらに、木々が茂る中庭からは柔らかな自然光が射しこみ、日中はどこにいても穏やかで居心地の良さを与えてくれる。シンプルでありながら複雑、多彩でありながら落ち着いた、この建物ならではの面白さを随所にたっぷり詰め込まれていた。
WORKSTYLE
この建物に秘められた多彩な空間は、働き方も過ごし方も、自分のペースで自由にデザインできるのが魅力だ。例えば、アイデア出しや気分を高めたい時は、1Fの開放的な吹き抜けでコーヒーを片手に、仲間と軽い談笑しながらじっくりと。集中して作業に没頭したい時は和室や別の個室にこもってもいいし、打ち合わせや企画づくりには3Fの屋根裏のような空間がちょうどよい。合間に中庭へ出れば、柔らかな光と風が気持ちをリセットしてくれるだろう。階段を上り下りしながら視界が切り替わるスキップフロアは、気分や発想を自然にスイッチさせ、まるで建物自体がインスピレーションを与えてくれるようだ。
すでに世界観ある空間だが、そのまま使うもよし。アレンジを加えて自分らしく仕立てるもよし。カフェやショップ、スタジオ、オフィスなど、多様な用途に柔軟に応えるため、フロアごとに異なる表情を与えるのもこの建物ならではの楽しみだろう。土屋鞄のものづくりのように、一つひとつ丁寧に時間を重ねていけば、ここで過ごす日々は静かでありながら多彩となるはず。働くことも暮らすことも、自然に豊かに育まれていくに違いない。
EDITOR’S EYE
実はこの白金北里通り、道路の拡張計画があり、将来的には片側2車線になるのだという。もしその工事が実施されると、この建物もセットバックのために、建物の一部を切り取る、または建て変えが必要となるようだ。。そんな計画もあり、今回は定期借家契約5年に絞っていて、その後は未定。なるべく計画が長引き、その分この建物、空間が今後も長い間大事に使われていくことを、個人的には切に望んでいる。