池尻オフィス|テラス付き天高4mオフィス
EDIT
>>LOCATION
渋谷駅から電車でわずか一駅の池尻エリア。半蔵門線での表参道方面へのアクセスや、徒歩での中目黒方面へのアクセスなど、住居エリアのイメージが先行しているが、その利便性は決して悪くないと改めて気づかされる。実際のところ住居エリアであるので、駅前の246沿いには飲食店も多数。コンビニ・スーパーなど生活施設も充実し、どことなく下町らしさの残る親しみある街並みだ。コロシアムを思い出させる様なオーパス夢広場の向かいから、大橋病院へと進んでいく途中、解体工事の囲いの先に一際目を引くこの建物があった。
>>SPACE
以前は大橋病院関連の書庫や研究施設で、数年ほど前にリセットされたこの建物。今回の区画はそのB1F/B2F区画だ。
募集としては現入居者の居抜きという大前提。上下合わせて150坪ほどの面積を確保し、天井高4mを超えるスケルトンをベースに仕上げられている少々男らしさを感じる空間。地下1Fは、建物自体が傾斜地であることをうまく利用し、窓を多く配置しているので、地下っぽさは微塵もない。小上がりになった場所には大きめのキッチン設備があり、その先には空間から繋がるように広がる専用のテラススペースにガーデンスペースと、第一印象のインパクトとしては相当なものだ。
中央にある異世界への入り口を思わせる扉に誘われ階段を降りると、真っ白に統一されたトンネルの様なギャラリースペースの先にB2Fが。高い天井高を活かした大きな階段と白と黒に塗り分けられた壁面は、もはや空間ではなくアート作品の様でもある。その他にも、空間に隠された細かな仕掛けに関しては枚挙に暇がないので割愛するが、設計者と共に考え尽くした入居者の意図を感じる空間だ。
>>WORKSTYLE
実はこの空間、数年前に400坪ほどのオフィスを解約した現入居者が、「オフィスはどうあるべきか?」「オフィスは必要か?」という議論に基づいて、新たに設けたインキュベーション型スペース。写真でも分かる通り、固定席や会議室といったオフィスにとってスタンダードな設備はほぼなく、あるのはただフリーで広大なスペース。デスクや椅子ももちろんあるが、不要な時はまるでオブジェの様に魅せながら収納されていて、オフィスでありながらラボやスタジオ・イベントスペース機能も兼用。各自が思い思いの場所で議論を交わし、お気に入りの場所で集中して作業する、そんなフレキシブルな働き方が出来る総合的なコミュニケーションスペースと言えるだろう。
コロナ禍での強制的な働き方の変革に伴い「仕事はオフィスで」という概念が覆りかねないこの時代に、オフィスに求められる新たな意味合いを作り出すためにはまたとない好素材。企業の本質を表現し、集う価値のあるだけのスペースとしてのこんな空間は、afterコロナ時代の、オフィスのスタンダードな姿の一つとなっていく様に感じられた。
EDITOR’S EYE
コロナ禍におけるオフィスのあり方が盛んに議論され始めた今、いち早く新しいオフィスの一つの形を示してきたこの空間は、惜しまれながらではあるが空間に流れる思想も含めて次の引継ぎ手を探している。300名ほどが一気に速度を気にせず利用出来るネットのアクセスポイントや、音の反響を考えたカーテンなど、設備的な不足はないはずだ。
オフィスとしてはあまり馴染みのないエリア・地下空間ということもあり、この仕様での坪単価としてはかなりお値頃に感じる。もちろん面積が大きい分固定費も重めではあるが、アイデアやイマジネーションを膨らませる空間として、有効に活用してみて欲しい。