南青山オフィス | リノベ済セミスケルトン空間
EDIT
表参道駅より5分程の骨董通り沿いに建つ、たつむら青山マンション。その名の通り、元は大型マンションとして建てられ住まわれてきたが、今ではその立地の強みもあり、多くの区画がオフィスとして使われている。今風のおしゃれなテイストにリノベーションされた空間も多く、部屋数が多いためにその空間のバリエーションも様々で面白い。そんな建物の上層階に、この夏新たにリノベーション組に仲間入りした空間をみつけた。
2015年に大規模修繕を行ったため、あと数年で半世紀を迎えるという割には綺麗な外観だが、建物内に入るとやはり昔のマンションの雰囲気が色濃く残されている共有部。正直おしゃれ物件とは言い難いその雰囲気だが、その印象があったからこそ、この扉を開けた時のギャップを楽しませてくれた。先にこの物件のウィークポイントを伝えると、天井の梁がだいぶ出っ張っており、空間全体を圧迫している面だろう。梁下で2Mもないほどで、背の高い人なら無意識に頭を少し下げてしまうかもしれない。扉を開けると最初に受ける印象はこれだが、すぐにその空間の評価はうなぎ登りとなる。室内は建物の素地を生かし、余計なものはあまり加えず、天井のコンクリートの無骨な肌感と無垢の床材の荒さだけが映えるシンプルながらこれとない空間。9Fなので程よく正面の建物を越えて遠くの風景も抜けており、光も遮られることなく日中も明るめ。このサイズで男女別トイレなのもなかなか珍しくてポイントはさらに高めだ。唯一のネックであった梁も、実は見る方向を変えるだけでそれほど気にならない存在となり、逆にどこかオブジェのようななキャラクター性もあり、可愛らしくさえ思えてくるかもしれない。
このまま椅子やテーブルを持ち込むだけで、コストもかけずとも、誰かを呼びたい衝動に刈られてしまうような空間。決して派手ではないこの建物の中にあり、哀愁感漂う共有部から、扉を開けると急に現れるこの空間という絶妙なギャップが、このオフィスを訪れた人たちに驚きを与えてくれることだろう。ちょっと言い過ぎかもしれないが、質感、素材感の強いこの空間で働いているだけで、他から一目置かれてしまうような存在にすらなってしまうかもしれない。骨董通り沿いの古いマンションの上層階にあるこの一室。こんな雰囲気の良い空間があるとはなかなか想像しにくいが、そんな意外性ある空間で、しっぽりと仕事と空間を堪能するのも悪くないと思う。
EDITOR’S EYE
いかにも青山らしい雰囲気のある空間に思えた。初期費用も割と良心的なので、その移転のコストが浮く分、この空間に合わせて、家具をフルコーディネートしてみるのもいいかもしれない。どんな部屋に仕上げようか、写真を見るだけでもワクワクしてしまうベースは整った空間だ。