EDIT
静かな住宅街の中に、小さなブティックや小洒落たカフェが点在する千駄ヶ谷周辺。周囲の中でも比較的アパレル系のオフィスが多く軒を構え、街を歩けば服のサンプル商品を抱えて歩く人も多く見る。この建物もまた、ファッション好きなら一度は耳にした事があるような有名ブランドがオフィスを構えていた事もあり、その筋ではちょっとした有名な存在。そんな建物の最上階。三角屋根の特殊区画が、ひっそりと募集されていた。
屋根裏部屋のような好奇心をくすぐる空間。元は住居仕様だったが、水回りなど必要のないものは取り払い、開けた空間へと生まれ変わった。東南の部屋は日中サンサンと光が差し込み、フローリングに反射した光が屋根の懐までを明るく照らす。片や、正面の吹き抜けから柔らかな光が注ぐもう一方の空間。渋めのフローリングも相まってか、どこか大人でシックな雰囲気を漂わす部屋だ。それぞれ異なる2つの空間から、自分の働きやすい照度を見極めて働く場を選ぶと良いだろう。部屋の形に目がいってしまいがちだが、少しフローリングにも注目してみてほしい。フローリングは部分的にツギハギされたちょっと変わった仕上げとなっている。これは工事の際に撤去した水回り部を、新たな木材をまばらに敷いたからだそうだ。感じ方は人それぞれだが、個人的には愛嬌を感じさせてくれる面白い仕上げに写った。大きな2つの空間に挟まれたかたちで、中央には小ぶりな部屋と水回りが配置されている。打ち合わせなどには程よいサイズの部屋。エントランスから直接アプローチ出来るので、来訪者をそのままお招きする事が可能だ。なかなか室内は優秀な作りと言えるだろう。ちなみに、共有部には離れのようなスペースも付いてくる。この中にはキッチンやトイレ、倉庫のようなスペースもあるので、こちらをうまく使い、室内はシンプルにスッキリと使えるのは嬉しい。
扉を開けると、家に帰ってきたような不思議な気持ちにさせてくれるこの部屋。平べったい家型が自然と身体にフィットするのか、異様な居心地を感じる空間だ。日々多くの時間を過ごすワークスペースだからこそ、この居心地は味方に付けたいものである。何よりこの特殊な空間。個性的な空間を求めている人なら、喉からすぐに手を出して掴みとってほしい。
EDITOR’S EYE
三角屋根の頂点は3Mほどあり、空間の圧迫感はあまり感じない。むしろ立つ場所によって様々な空間の変化を楽しめ、開放感すら与えてくれる。写真では伝わらないかもしれないので、念の為補足として。室内で1点残念なのは、天井に設置された住居感を漂わす丸いシーリングライト。これは少々キツいが、簡単に交換も出来るので、少し色気のあるものに変えて頂きたい。きっとより良い空間になる事は間違いない。