EDIT
築40年と年季の入った建物。床や天井を見れば、その積み重ねてきた歳月を感じることができる。そしてその建物のひと時に寄り添って、共に歩むこと、それがただの働く場所ではない、この建物との付き合い方かもしれない。
共同玄関で靴を脱ぐと、正面にディスプレイされた多肉植物たちが迎えてくれ、ステンドグラスとコンクリート打ちっぱなしの床は、ここが個性的な場所である事を印象付ける。
階段を上った2階に2部屋。
ひとつは大きな窓とサンルームのような空間があり、あめ色に使い込まれたフローリングブロックが懐かしい、昔の小学校を思わせる、ほっこりするような部屋。窓側の部屋と廊下側の部屋は、使い手の遊び心しだいで楽しみ方も広がる空間だ。
もうひとつの部屋は対照的に、コンクリートの床と天井の際にスリットのように入った窓で、ほのかに明るい無機質な空間。窓にはさまれた稼動本棚があり、入居者次第で何色にも染まるシンプルな部屋。4~5人くらいまでのオフィスであれば十分に使える愛着のもてる空間。
1階には小さな部屋がひとつ空いている。
東に面して大きな窓、コンクリートの床と天井、白い壁、至極シンプル。マンションをオフィスとして使用したときのような、キッチンやお風呂などの無駄なスペースがないので、小さな空間でもだいぶ広く感じる。これから一人で始めるという方にちょうど良い大きさ。
他の部屋には設計事務所が入居済みで、その他にもクリエイティブな業種の方が入居予定。クリエイティブな業種が集まり、ビル内で交流が生まれる期待感も膨らむ。
文京区の白山下商店街の端に位置し、オフィス的な立地ではないという印象もあるが、実は交通の便は良く、地下鉄は都営三田線、都営大江戸線、南北線、丸の内線が使えて、自転車があればJR水道橋駅まで10分弱。
リノベーションを通じて再生した古い建物は、このエリアにポテンシャルを感じて、少しかわした働き方を楽しんでくれる入居者を求めている。
EDITOR’S EYE
この建物は、空間やデザインの好き嫌いでなく、気が合うか合わないかが決め手になるだろう。年月を経た分、この建物には雰囲気も性格も主張はあるのを感じる。この建物に施されたリノベーションはあえてそういった建物の性格をストレートに伝えているから、この建物に入居してもらうときには、気に入ったという表現より、気が合ったと言ってほしい。
きっと気があった入居者は、その空間を理解して大切に過ごしてくれる。そんなメンバーが集まった建物は、そこで過ごす働く人たちにかけがえのない時間を与えてくれるだろう。