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渋谷区中西部に位置する富ヶ谷。地域内の大半が住宅地となり、隣接する松濤や神山などから続く品のある邸宅も多く点在するエリアだが、近年では徐々にそれらを改装したオフィスも多くなって来たことで、今後が楽しみなエリアの一つと言えるだろう。そんな場所に見つけたこの物件も、山手通り沿いに建つマンションの一画をリノベーションした空間で、そのニュートラルな空間は働き方の想像をかき立ててくれる魅力を放っていた。
対象の区画は2階部分。元は3LDKの住居タイプだったというこの区画は、今ではワンルームのオフィス仕様に変更され、程よくベーシックにリノベーションされた空間へと変貌した。天井は建物の骨格をあらわにしたスケルトン仕上げ。職人が苦労して打ったであろう唯一無二のコンクリートの表情は、どこか愛嬌すら感じさせる。床は無垢材でないのが少々残念なところではあるが、この質感の良いフローリング調のシート貼りはなかなか魅力的だ。上下の荒々しい表情をうまくまとめているのが、白く塗装された壁だろう。空間をギュッとまとめ、より上下の素材感を強調させてくれている。ポイントをキッチリ抑えた作りだ。水回りも新設され、男女別トイレや、ステンレスのスタイリッシュなキッチンなど、願ったり叶ったりの作り。さらに収納も多めなところも地味に嬉しい。表面だけではなく、見えないところもキッチリ仕上げきているので、文句の付けようもない。前面は山手通りに面しているので、音の問題を懸念するかも知れないが、それも心配ご無用。なぜなら窓は全て2重窓に変更され、ラッシュアワーでも安心の環境となっている。これも嬉しいポイントだ。照明は蛍光灯が設置されているが、もし色気を出したいならオレンジ色のライトに換えると良いだろう。さらにペンダントなどでピンポイントを照らせば、よりムード感アップだ。空間は特別強い個性があるとは言えないが、ベーシックに仕上げられた扱い易い空間と言えるかも知れない。
どんなテイストにもフレキシブルに対応してくれる空間と言えるだろう。コテコテの男らしいハードな空間に仕上げて良し。明るめの家具で女性らしいやわらかな空間も良し。逆にポップにカラフルな空間や、アンティーク家具でレトロな空間、大半を植物などで浸食させた植物園のような空間もありではないか。個性的な出来上がった空間も面白いが、この空間のように自分色に育てて行くのも面白い。日々多くの時間を過ごす空間だからこそ、想像をかき立てて楽しみたいのがオフィス空間だ。そんな楽しみを、このニュートラルな空間はより幅を広げて与えてくれるだろう。
EDITOR’S EYE
最寄りの代々木公園駅から10分程と少々歩くが、この空間の仕上がり、坪1万弱という魅力的な数字を考えると、とてもお得な物件と言えると思う。いや、むしろなかなか出ない希少物件なので、迷ってる暇はないだろう。