EDIT
青山通りから路地を入っていくと、大通りから離れるごとに、住宅街の雰囲気も色濃くなり、緑の多い落ち着いたエリアに入る。表参道と明治神宮前の中間あたりの住宅街には、古い建物を改装した雰囲気の良いカフェやショップが点在し、住宅街にあっては異様な建物が住宅の並びに次々と現れ、改めて神宮前・青山の特異さを感じさせるエリアだ。そんなエリアでこの建物を見つけた。
1991年築の、決して新しい建物ではなく、かつデザイン性の高い建物というわけでもなく、清潔感のあるスタンダードな建物といった印象。当初は居住用として建てられたらしいが、現在はほぼ全室オフィスで利用している。
室内も建物と同じような印象。静かな室内環境と、ガラスブロックからの柔らかな光がたっぷり入る心地の良いオフィス。住居の名残だろうか、自然体でリラックスして過ごせる雰囲気は、オフィスでのプレッシャーを程よく緩和させてくれるだろう。
大きめのキッチン。昼夜問わず働く企業に嬉しい、バスルーム付き。しかし一方で、細かく見ていくと壁紙や建具などが元々の住居っぽさが気になってしまう方もいるだろう。そこで、すでに天井が抜かれており、照明も自由度があるこの空間のポテンシャルを活かして一部だけでも改装してみてはいかがだろうか。パーテーションなどの建具や床材だけでもデザインを変更すれば、あとはアレンジ次第でカッコ良くも仕上がりそうな期待ができる。
この柔らかな雰囲気を活かしてシンプルなインテリアで仕上げ、座り心地や手触りの良い家具を置けば、特別な演出なしに、スタッフも心地よく、ゲストを招いた際には和やかに過ごせるような空間になるだろう。ここへの移転がきっかけで、柔らかな空気感が、柔らかなコミュニケーションを誘発するような環境を整えてはどうだろうか?
EDITOR’S EYE
ユニークさではなくみんなが気に入るようなスタンダードさ。ゲストをオフィスに招いてじっくりと打ち合わせができるような落ち着いた雰囲気。オフィスでありながら、独特の柔らかな居心地が感じられるような。そんなよくありそうなのに、なかなか見つからない物件だと思った。