代々木上原駅に降り立ち、井の頭通りを越えて上原の住宅街に入る。いわゆる高級住宅地と言われるエリアの一つだが、その中には真新しいデザイン性の高い邸宅もあれば、逆に建物はだいぶ古めだが、それを新しい感覚でうまく利用しているような物件も混ざっており、ただただ高級な住宅地というだけでない、面白い街並みが広がっている。そんな中で、1970年代に建ったという、ひときわレトロなこの館をみつけた。

元はオーナーの居住用に建てられた建物だが、それ以降は歴代オフィスとして使われているこの建物。そのために、門には看板を取り付ける位置もご丁寧に確保されている事など、住戸タイプの物件を使う上で地味に嬉しいポイントだ。白い壁とブラウンの柱が作り出すその表情はどこかレトロで、緑の木々に囲まれる事でより”館”感がにじみでているとでも言えるだろうか。なかなか印象的な表情を作り出している。その内部もその世界観を維持しており、エントランスを抜けると、まるで少し時代が遡ったような室礼に出迎えてくれ、少し行儀よく振る舞いたくなるような品の良さすら感じられた。１階にはメインのLDKの他、ロフトがついた開放的な空間が１部屋あり、それらが庭を取り囲むように配置されているので、全体的に明るく、風通しも良い。また、庭にはちょっとしたウッドデッキも備わっており、軽く外の空気を吸いたい時やタバコ休憩、天気の良い日にはカジュアルなランチミーティングなど、室内での作業に飽きた際は是非この場を有効活用してほしい。

２階部分はより細かく3部屋の個室で分けられている。ハウスオフィスの場合、廊下があり部屋が分かれている事で、有効面積が減るというマイナス面はあるが、かたや、お互いの部屋を行き来できる位の距離感があるというのは、長時間をともにするスタッフ同士には、あって悪い物ではないかもしれない。現状のままで十分個性のある空間であるが、使い込んでいく事で、自分たちの風味が加わり、長く使えば使うほど、建物の素晴らしさを味わえる物件となるのかもしれない。

最寄りは代々木上原駅だが、下北沢駅も徒歩圏内である。駐車場も１台付いている事を加味すると、立地や物件自体の質にしては、かなりコストパフォーマンスが良いのではないだろうか。