EDIT
青学の脇の路地を進み、大通りの喧騒が薄れ始めたところにこの物件はある。華やかさに溢れた青山の中で、少しかわした立地。でも、そんな雰囲気を好む人々が行き来する通りに面しているから、さみしさは微塵も感じないところ。
前の入居者は店舗として利用していた空間。
2007年に建てられた近代的な建物に、柔らかい木の質感を与えてくれた。その空間のセンス、造りこみのクオリティーの高さから、オーナーも次の入居者の利用を期待し、取り壊すのを中止している。
ここには、元店舗でありながら、色がつきすぎていないニュートラルさがある。壁面に供えられた収納は、店舗としても当然ながら、オフィス、ショールームとしても十分活用できるもので、さらに地下には3750mmの天井高を併せ持つ、仕切りのない格別な空間がある。
路面からの直接動線、室内からの専用内部階段もあり、利用方法は新しい入居者のセンスにより広がりを持つ。まっさらな空間を1から作りこむ楽しみもあるが、この物件は、既存の空間をいかに活用するかを考える楽しみがある。
この物件との出会いは、お見合いの感覚に近いかもしれない。
すでにある程度ができているからこそ、見た目ももちろん、雰囲気、付き合い方(利用方法)、一緒にやっていけるかどうか、愛せるか、などなど、一緒に過ごしていくパートナーを決める感覚だ。人との出会いと同じように、ただ見るだけではなく、実際に空間に立ってあなたのしっくりくるところを感じてほしい。
EDITOR’S EYE
デザイン性の高い物件への入居を希望する方は、初期の空間造作費用が不要と考えると、比較的スムーズに検討できるかもしれない。ストックルーム、カウンター、ソファ、十分すぎる収納が、素材感のある床と、開放感のある天井高に備わっており、この空間のもつポテンシャルを最大限に活用したデザインの1つの優良な事例であるのは間違いない。
青山を少しかわした青山で、今ある素材をもとにオリジナリティある働き方をデザインしてほしい。